浜野考史(孝史)、ヴァイオリニスト

 

1971年生まれ。

3歳の頃にピアノを、5歳より東京・町田市にある小さな音楽教室にてヴァイオリンを始めます。ピアノはすぐに止めてしまいましたが、ヴァイオリンは音楽教室の先生により才能を見出され、わずか2年後には公開演奏を、翌年には東京芸術大学講師の二村英之氏の元へ通い始めます。

氏はパウル・クリング氏の下、チェコのセヴシック流派のメソッドを学び、その後にロシア流派やアメリカのガラミアンのメソッドをドロシー・ディレイ氏のもとで研究しました。

氏の意向で1984年から全日本学生音楽コンクールに7回コンクールへ出場し、毎回上位入賞を果たします。12歳には同コンクール東海大会で1位の成績を収めました。

12歳より父の転勤により名古屋に転居し、高校は菊里高校の音楽科へと進学します。

その後二村氏が教鞭をとる理由により東京音楽大学へ進むことになります。そして優秀な成績の結果、特待生として入学しました。

 

在学中、沖縄ムーンビーチミュージックキャンプに参加、原田幸一郎、岩崎洸、岩崎淑、久保陽子の各氏の室内楽クラスに参加、またイヴリー・ギトリス氏のマスタークラスを受講、また倉敷音楽祭に度々出演、朝比奈隆氏や井上道義氏の指揮でオーケストラに参加しました。

大学卒業後には松原勝也氏や岡山潔氏(共に東京芸術大学教授)の下で研鑽を重ね、

次第に室内楽に惹かれ、ピアノ三重奏や弦楽四重奏に興味を持つようになりました。

 

1993年以降、日本の各地の数々のオーケストラにゲストコンサートマスターとして出演しました。

 

1995年には友人の誘いを受け、YAMATO弦楽四重奏団の第一バイオリン(1995〜2004)として活動を開始します。

日本各地で度々演奏会を行い、第2回大阪国際室内楽コンクール弦楽四重奏部門ではファイナリストに選出されました。

また「山田耕作の室内楽全曲」の世界初録音を行いました。

 

1993年〜1996年、『ベートーヴェンのソナタとヴァイオリン音楽の系譜』と題してリサイタルシリーズを開始、音楽の友など楽界の注目を集めました。

 

1997年、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団に入団、アシスタントコンサートマスターの後、コンサートマスターを2004年まで務めます。在団中、飯守泰次郎氏の指揮でベートーヴェンやブルックナー、ワーグナーのシリーズに、矢崎彦太郎氏の指揮ではフランス音楽のシリーズに参加しました。また来日バレエ団のツアーでは度々コンサートマスターを務め好評を得ました。また題名のない音楽会に同団のコンサートマスターとして度々出演、クラシックのみならずポップスの分野の演奏も行い、羽田健太郎氏、藤野浩一氏らと共演しました。

1999年よりカメラータ慈音の創設に加わり、コンサートマスターとして出演、エリック・ハイドシェック氏、青木十郎氏、クリスティーナ・ワレフスカ氏、フェデリコ・アゴスティーニ氏と共演しました。

2000年、ウクライナ・日本文化交流派遣に参加、「Art of Music Festival 2002」でソリストとして出演、キーウ、チェルカスィ他でキーウ音楽院教授のボホタル・コトロヴィッチ氏の指揮でキーウソリスツと共演、キーウ・シェフチェンコ劇場にて演奏、ミロスラヴァ・コトロヴィッチ氏とバッハの2台のヴァイオリンの為の協奏曲を演奏しました。

 

2004年〜2014年 東京ニューシティ管弦楽団(現・パシフィックシンフォニーオーケストラ)に客員コンサートマスターとして出演、2010年には音楽監督の内藤彰氏(当時)の指揮で貴志康一のヴァイオリン協奏曲を直筆譜による原典版で同楽団と共演、注目を集めました。

同楽団のコンサートマスターとして久石 譲氏のレコーディング、海外の大物アーティストのプラシド・ドミンゴやサラ・ブライトマン、バート・バカラック、スティング、アンドレア・ボッチェッリの各氏との共演、マイケル・ジャクソン氏の前では氏の楽曲を演奏しました。

2005年からは K Ballet Tokyoのオーケストラ、シアター オーケストラ トウキョウに同バレエ団の公演にてソロコンサートマスターとして度々出演しています。 

2006年には日本タイ国交100周年事業にてバンコクにて在タイ日本大使館にて演奏、ソロや室内楽をバンコク交響楽団のメンバーと共演、矢崎彦太郎氏指揮のオーケストラでコンサートマスターを務めました。またタイ・ホアヒンにてシルカポーン大学のサマーセミナーにて指導を行いました。

 

2007年より菖蒲弦楽三重奏団のヴァイオリニストとして忘却の彼方にあった日本の明治以来の作曲家による作品群を録音、

「日本弦楽三重奏曲の世界」第1集(團伊玖磨、下総皖一、諸井三郎)、第2集(清瀬保二、呉泰次郎)第3集(紺野陽吉、塚原晢夫、原博)、「紺野陽吉の音楽」、「草川信 室内楽全集 特別編」をリリースしました。

 

2014年、42歳に東京での全ての活動を一旦休止し、渡仏を決意をします。

その理由は、日本に伝わってきた西洋音楽の検証と改めてバイオリン奏法の伝統を学びなおすことでした。2014年より3年間パリ・スコラカントルムに在籍、パトリス・フォンタナローザ氏のクラスに学び、2つのディプロム(Virtiosité、Concertiste) を取得しました。同時にパリ高等音楽院教授であるオリヴィエ・シャルリエ氏の門を叩き、現在も継続して師より指導を受けています。

2016年より東京プライムシンフォニーオーケストラにゲストコンサートマスターとして出演、同団の韓国ツアーに度々参加、韓国各地で演奏しました。

2018年より光州広域市にて度々マスタークラスを行い、またアジア・アート・オーケストラとメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲を共演、

2019年には光州市立交響楽団とブラームスの二重協奏曲を共演しました。

 

2020年、コロナ禍の中、文化庁の支援を受け、アンサンブル・レグザンスカを創設、フランス・バロック音楽を映像収録、

YouTubeに発表しました。

 

2022年には英国ロイヤルバレエガラコンサート来日公演にソリストとして出演、同バレエ団と共演し、好評を得ました。

 

また近年は様々な形態による編曲を活発に行い、ピアスコアよりその楽譜を多数出版しています。

 

現在フランス・ヴェルサイユに在住、同地の多くの音楽愛好家たちと活発に交流する他、フランス、日本、韓国にてソロ、室内楽等、

幅広く活動しています。そして現在もオリヴィエ・シャルリエ氏のもとで研鑽を積み、氏より作曲家に対する真摯な態度と、

楽譜の忠実な再現を学び実践しています。フランスでの学びを通じて、音楽の真の意味や社会的役割を理解し、

特に競争や報酬よりも内なる深層によって音楽が作られることを重要視しています。

歴史や伝統を尊重し、音楽を通じて共感や理解を広めることを目指し、演奏を通じてその理念を実践しています。 

〜2023年3月29日・東京、 浜野考史 ヴァイオリン リサイタルに寄せて〜

 

卓越したヴァイオリニストであり充実した表現力と感性を備えた芸術家、

浜野考史氏に大いなる称賛と親愛の情を贈ります。

今回のコンサートは多くのフランスの作曲家たちの作品が並び、その作品は様式への探究と認識により理解され、

彼の演奏は見事な洗練さを持ってその豊かさと繊細さを明らかにすることでしょう。

素晴らしい音楽の夕べになることを願っています。

 

オリヴィエ・シャルリエ

(ソリスト、パリ国立高等音楽院教授)